

HARUMITSU
HIRANO
U.T.O.が自身の「羅針盤」
生産者特殊部隊U.T.O. 隊員 平野晴三
緑川の河口付近、有明海にも面した宇土市網津地区でミニトマト栽培に取り組む平野晴三さん。口下手で、あまり人と関わり合いたくなかったものの、「U.T.O.」の活動を通して自身の生産物の魅力を人に伝える楽しさが分かってきたといいます。U.T.O.が自身の羅針盤、道しるべになっているという平野さんに、その思いを取材しました。

“人と関わり合いたくない”から再び始めた農業
高校卒業後に家業を継ぎ、農業を始めたものの、一度離れた経験を持つ平野さん。「親とずっと一緒に働きづめ。自分の時間がないのが嫌になって、違う仕事をしてみたい」。県外に住む姉を頼り、アルバイトをしながらデザインの専門学校に通うことに。しかし、交通事故によって足を複雑骨折。全治3ヶ月となり、実家に戻ってきたといいます。「学校にも通えなくなり、農業をするしかないのかな、と考えました。もしあの事故がなければ今は別の仕事をしていたかもしれません」
事故を経て、平野さんが再び農業を仕事に選んだ理由の一つが“人と関わり合いたくない“。「もともと他人との交流が苦手で、農業だったら野菜に向かっていればいいかな、と。今思うと、ものすごく消極的な理由ですね」。

「消費者の反応を知りたい」。気持ちの変化
再び農業を始めた平野さん。両親から畑を分けてもらい、1人でトマト生産に取り組みます。そうすると次第に、自分でつくるトマトがどういう反応をもらえるか知りたくなってきたといいます。“人と関わり合いたくない”平野さんの、大きな変化でした。
消費者と触れ合う機会がないかと探していたところ、U.T.O.の立ち上げメンバーである小森大将さんが消費者と直接関わっているという話を聞きつけます。「農家の集まりで小森さんを見かけて、『どうやったら消費者に直接販売ができますか』と話しかけました」。その縁から、販売会やマルシェに誘われ「『消費者の声を聞けるかもしれない』と、二つ返事で参加しました」。

U.T.O.で「おっこい」挑戦を続けたい
自身が生産したトマトを持って販売会に参加、消費者と対面した平野さん。「試食後、『おいしい』『甘い』といった声をかけてもらいました。簡単な言葉ではあるけれど、笑顔といっしょに言われて、生産への意欲が湧きました。農業って悪くないなって」。
その経験から平野さんは、生産することだけに集中すると、消費者とのかかわりは生まれないと痛感したといいます。「自分から働きかけないと、消費者がこちらに来るわけではない。アクションを起こさないと伝わらない」。そのタイミングでU.T.O.の話を聞き、「おもしろい、一緒にやりたい」と、隊員になることを決意しました。
U.T.O.が当初から掲げているモットーが、『うまか』『とつけむにゃ(=熊本弁で「とんでもない」)』『おっこい(=宇土の言葉で「ふざける、おもしろい」』の3つ。「U.T.O.で、『おっこい』ことに試行錯誤でチャレンジしたいと思って参加しましたし、その思いは今も変わりません」。

結婚後サポートをしてくれる奥様に感謝
平野さんの農業を支えているのは、消費者からの反応に加え、奥さまの美里さんの存在です。
結婚後1年ほど、美里さんはもともとの仕事である介護を続けていたものの、トマトの選果、箱詰め作業の手伝いをしていて「楽しい!」と言ってくれたそう。「それまで農業に関わることがない生活で、珍しかったんでしょうね。箱詰めされてレールを流れていく様子に『おもしろい』と興味津々でした」。本格的に農業を一緒にやってみたいと相談され、「奥さんの方から提案されたのがうれしかったですね。感謝してもしきれないくらいです」。
いまでは夫婦2人で、ミニトマトや米、スイカづくりに汗を流す毎日です。「トマト生産の楽しみを感じてくれているみたいです。『目に見えて日々成長するのが楽しい』と言ってくれます」。平野さんから笑顔がこぼれます。

自分が行きたい道を示してくれる、U.T.O.の存在
U.T.O.結成から10年。平野さんのライフスタイルも大きく変化しました。その一つが子どもの存在です。「双子の子どもの親になり、食育に対する意識も生まれました。また、『食べられない子どもたち』への支援についても考えるようになりました。そういった子どもをなくすというのも農業をやっている人の責任だと感じています」。今後は、U.T.O.の仲間と食育や農業体験に力を入れていきたいと夢を語ってくれました。
U.T.O.に参加したことで、「人生の道しるべ、羅針盤を得られた」と断言する平野さん。「迷った時、困った時は必ずみんながいてくれる。情報を共有しながら、自分が行きたい道を定めることができる」。仲間への信頼感をにじませます。
“人と関わり合いたくない“からスタートした平野さんの農家人生。今ではU.T.O.として同業種、異業種にかかわらず、さまざまな人と関わるようになりました。「でも、その変化がうれしいんですよ」。平野さんの“人と関わり続ける農業”はこれからも続いていくことでしょう。








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